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2017年 09月 02日
代替医療の光と闇(ポール・オフィット)
たまには真面目な本も読む。感想は書かないけど「最悪の事故が起こるまで人は何をしていたか」とかも読んでいた。しかし、真面目な本は読むのに時間がかかる。ハードカバーなので通勤中とかに読みづらいし。

で、この本。主にアメリカで蔓延る代替医療について述べる本。こういう書き方をしている時点で、代替医療の否定的な部分が中心的に取り上げられる。「光」の部分は12章中1か2章ぐらい。内容的にはプラセボどまりで、個別の代替医療の効果は全く認めていない。まぁ、代替医療なんて立証されていないのだから、そういう扱いになるのはしょうがない。

自分自身は、理系なのと、科学ジャーナリストの人やSF作家に影響を受けているので、代替医療には否定的。気休め程度には考えているけど、標準医療をやめてまで代替医療に掛かるなんてナンセンスだと思ってる。この本を読むと、アメリカでは行きつくところまで行ってるというか、絶句する。基本的に、お金のためには人をだましてもよい、と考えている代替医療の主体が多い、という印象を受けた。印象的な一文は、
ブルーメンタールは弁護士だ。彼はもし法が自分に有利であれば法を論じ、事実が自分に有利であれば事実を論じるべきだと知っていた。そしてもし両方とも自分に有利でなければ、証人を攻めるのだ。なのでブルーメンタールは証人を攻めた。
である。依頼者の要求にこたえるためには何でもやる、という態度に衝撃を受けた。こういう文章が訳文的に出てくると、とても印象的。翻訳なので、全体的に訳文な感じが漂っていて、読みづらくもあり、印象的でもある。

2~3か月前になんとなく購入した本だけど、小林麻央が民間療法に傾倒してああなったという噂があったり、友人がステージ4になったが入院して2年後に経過観察レベルまで回復したという話があったり、タイミング的に印象的な本だった。スティーブ・ジョブズとか、千代の富士も民間療法に傾倒していたとか。

願わくば、代替医療に夢見ている人が本書を手に取って、両者の立場を適切に勘案してほしいと思っているが、そういった人たちは得てして自分の考えを否定する人たちに対して攻撃的で排他的なので、きっと届かないのだろう。藁にも縋る、という考えもある。もちろん、医者がさじを投げるレベルならしょうがないが、全然助かるレベルで標準医療を手放すのは愚かである。そんな愚かな人が多く、この今でも数多くの悲劇を生んでいるというのが悲しい。


by alfred000 | 2017-09-02 21:01 | | Comments(0)


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